【女性アスリート・トレーナー必見!】個々に合った回復食を考えるポイント
こんにちは!GAP大阪の池田です。
7月4日に女性限定で行われた「プロが教える回復食〜個々にあった食事法を考えるポイント」で当日どのようなことを学んだかご紹介します!
講師紹介
金井麻由美
・スポーツ専門の管理栄養士
・陸上長距離実業団チームの栄養サポート
・車椅子テニス選手のパーソナルサポート
スポーツの現場をメインにフリーで活動する管理栄養士。
陸上長距離の実業団チームの海外・国内合宿食事提供のサポート、アスリートへの個別栄養指導・集団栄養指導、車椅子テニス選手の大会遠征サポート・栄養指導など、アスリートの管理栄養士として幅広く活躍をしている。
1.リカバリーとは?
皆さんはリカバリーについて考えたことはありますか?
リカバリーとは簡単に言えば「回復」のことです。
スポーツにおけるリカバリーとは アスリートが疲労状態から元の状態に戻す過程のこと を指します。
スポーツ選手に栄養指導をする際に、リカバリーができているかどうかの判断基準は、筋肉の「グリコーゲン回復」を指標にすることが多くあります。
2.疲労回復のための栄養のポイント
疲労が回復できているかどうかの基準が、筋肉内のグリコーゲンでも判断されるように、疲労回復をする上で栄養摂取はとても大切です。
栄養を摂取する上で、大切にしたいポイントがあります。
それは「食べ方の3W1H」
Why なぜ
When いつ
What 何を
How どのくらい・どのように
食べ物の量・組成、タイミングは運動能力に大きな影響を及ぼします。加えて、下記のポイントを押さえることができると、効率的なカラダ作り、よいコンディション作りができます。
①「糖質+タンパク質」の組み合わせ
疲労回復の食事のポイントの1つとして大切なのは 糖質とタンパク質 の組み合わせです。
糖質(0.8/kg/時)+タンパク質(0.2-0.4g/kg/時)
これが回復食として摂取すべき、糖質とタンパク質の量です。
十分な糖質摂取が、タンパク質のポテンシャルを最大に引き出します。
皆さんの中には「筋肉=タンパク質」というイメージを持ってる方もいるかもしれません。
もちろん筋肉の「材料」になるのは、タンパク質です。
しかし、タンパク質には「エネルギー源になる」、「カラダの調整をする」という2つの役割があります。
特にエネルギー不足が発生したときは、タンパク質はエネルギー源として使用されルため、カラダ作りの方まで使用することができなくなります。
このように体内のグリコーゲンが不足すると汗中への尿素排泄量が大幅に増えます。
カラダを削ってエネルギーを確保しょうと働くために、「タンパク質=筋肉」が一番最初に分解されてしまいます。
そのため、トレーニング前、トレーニング中の糖質摂取量のコントロールが重要です。
▼糖質摂取の目安▼
1~1.2/kg 体重/時間
例)
50kg→50g 1時間
ご飯:茶わん 1杯 150g (糖質55g)
高糖質が取れていると筋グリコーゲンの回復が早く、低糖質だと疲労が蓄積されやすくなります。
体内に蓄えられるグリコーゲンの上限の数値はこちら↓
筋肉中のグリコーゲン貯蔵量の上限:「200~250g」
肝臓のグリコーゲン貯蔵量の上限:「150~200g」
この2つが水分と一緒に取り込まれることによって、運動していない日の次の日には800g~1500gの体重アップの可能性があります。
選手の疲労度を推し量る指標として「体内のグリコーゲン量」をモニタリングし、足りていない場合には素早くグリコーゲンを回復できる食事を摂取しましょう!
②ビタミンB群の摂取
糖質+タンパク質に加えて、疲労回復のために摂取して頂きたいのが、こちらのビタミンB群です。
現代の食事では、ビタミンB群が不足しがちです。理由としては大きく3つあります。
1.食品の変化
→食品の精製・加工・保存によってビタミンB群が減っています。
2.ビタミンB群の消費量が増えている
→精製された白い食べ物、ストレス、過度のアルコール摂取、妊娠、授乳、加齢、過食等でビタミンB群の消費量が増えています。
3.抗生物質の⻑期服用
→ビタミンB群は腸内の細菌がつくってくれますが、抗生物質を⻑い期間飲んでいる人は、腸内の細菌バランスが乱れ、ビタミンB6等の合成量が少なくなります。
惣菜パンや菓子パンをよく買ってつい食べがちですが、玄米や全粒粉のパンにする工夫を少しするだけで栄養価が上がるので取り入れていきたいと思いました。また選手にも勧めていきたいと思います!
こちらの表には、それぞれのビタミンの種類と主な機能、欠乏した場合に起こる疾患、多く含まれる食品が記載されています。1つにビタミンだけではなく、様々な種類のビタミンを摂取できるように心掛けてみてください。
また選手などにアドバイスをしたりする場合は、それぞれの選手によって合うものが異なります。そのため、普段食べているものをヒアリングし、話し合いながら、それぞれの選手に合うものを決めていくことが大切です。
3.疲労回復のための栄養摂取のタイミング
ここまで栄養摂取の内容にそれぞれどのようなタイミングでとればいいのか疑問を持っている方もいるかと思います。
▼トレーニング後(試合後)の食事▼
運動後30〜120分以内
捕食:糖質+タンパク質
【タンパク質(0.2-0.4g/kg/時)+炭水化物(0.8g/kg/時)】
↓
帰宅後
ご飯・一汁三菜・果物 をしっかり食べる。
上のような摂り方がベストです。このように摂取することで「トレーニング効果」「疲労回復」を最大限に行うことが出来ます!。
ここで1つ、豆知識をご紹介致します💡
試合前や試合中に簡単に摂れるものは?という疑問をお持ちの方も多いと思います。
試合前にオススメの物として、金井さんがおすすめしているものは、やおいなりさんやゆでたまご、チーズです!時間が無くて朝ごはんを作れない時でもコンビニで購入することが出来るので、手軽に食べることができます。
試合中はアミノ酸入りのドリンク、サプリメントを摂ると良いそうです。一緒に補給するお水も硬水と軟水では、全く入ってる成分が異なるため、そこに注目してみるのも面白いですね!
4.疲労回復のための食事の内容とは
記事の前半で栄養摂取の内容について、糖質とタンパク質の大切さを解説しましたが、さらに深く解説していきます。
①糖質
練習や試合後の食事では、血糖値をゆっくり上昇してくれるものをチョイスしましょう。
糖質の中でも パラチノース を使用した商品はおすすめです。
パラチノースとは、砂糖由来で蜂蜜に微量に含まれる糖質の一種ですが、吸収速度がゆっくりで「スローカロリー」な糖質と言われています。
糖質にはこのような分類分けがされており、分子が小さい方が吸収が早くなります。
分子の大きさは、「どのタイミングで、どのような糖類を摂取するか?」を選択することが大きなポイントになります。コンディションやパフォーマンス大きく影響するので、考えて選択しましょう!
②タンパク質〜プロテイン〜
練習や試合後にプロテインを摂取する人を、野球の現場でもよく目にするようになりました。
様々なプロテインがありますが、まずはプロテインに含まれるアミノ酸について解説します。
プロテインはアミノ酸の結合状態によって消化吸収の速度が変わります。
分子が小さくなればなるほど吸収されやすくなります。
選手個々の状況に合わせて利用することでコンディショニングの維持・向上に繋がるため、考えて摂取したいですね!
プロテインにも種類があり、この表のような違いがあります。
リカバリーを速くしたい場合はホエイやカゼインを飲むとよく、それとは反対にソイプロテインは速度が緩やかで長時間利用することができます。
プロテインとアミノ酸の違いは?
《プロテイン》
身体の抗生物質(身体作り)として活用
*アミノ酸スコアが高くなるように作られている。
《アミノ酸》
身体の能力向上させるために使用
*各アミノ酸の単体での効果を期待して作られている。
アミノ酸に期待できる効果は、下記の表などがあります!
また表にはありませんが、アミノ酸の一種であるタウリンの摂取も有効です。タウリンの効果には以下の3つがあります。
・細胞膜損傷の抑制
・酸化ストレスの低減
・浸透圧の調整
◎エネルギー代謝の調節
運動時の糖利用を抑制=筋グリコーゲンの節約⇨血糖値を維持し、⻑時間の運動の疲労を防ぐ効果があります。
タウリン摂取のタイミングは以下の通りです。
1.トレーニングの直後
ゴールデンタイム(トレーニング後30〜120分以内)に血中のアミノ酸濃度が高 く保たれていると、筋肉の回復に使用されます。
2.就寝前
就寝直後、成⻑ホルモンが多く分泌されるのため、このタイミングでアミノ酸が多くある状態は、身体づくりにベストです。
3.間食・補食
食事と食事の時間が空いてしまい、エネルギー不足になる状況を防ぐための補食として活用します。
ここで金井さんおすすめ「手作りプロテイン」の作り方をご紹介します!
手作りなので添加物もなく、ドーピングのリスクも避けられるので、是非作ってみてください!
③ビタミン・ミネラル
ビタミン、ミネラルは1日で全部を摂取することが難しいため、3〜7日間で過不足なく摂取することがポイントです。どうすれば継続してできるのかを選手と一緒に相談し、やり方を考えて行きましょう!
⚠️食品添加物・加工物に注意⚠️
ここまで摂取したい栄養素をご紹介してきましたが、それとは反対に摂取したくないのが、以下のような食品添加物の多い食品です。
・菓子パン → イーストフード(リン酸塩) 、乳化剤
・インスタント麺・中華麺 → かんすい(リン酸カリウム、リン酸ナトリウム)
・菓子類(ビスケット・クッキー)・ふりかけ → 膨張剤(リン酸カルシウ厶)
・具入りおにぎり、持ち帰り弁当、調理パン、即席中華麺 ハム・ソーセージ、ベーコン、冷凍食品、ハンバーグ 魚肉・練り製品、 佃煮、 菓子パン、ビスケット、クッキー、炭酸飲料 など →結着剤(リン酸塩、ポリリン酸カリウム)
品質改良剤(ポリリン酸ナトリウム)
上記のものには、注意が必要です⚠️
食品添加物は栄養素の吸収を阻害するリスクがあります。できるだけ自然な食事を取り入れるようにしましょう!
上記を考慮しての食事は、食事はこちらです↓↓
まごたちにわやさしい + 果物
この頭文字に合わせて食品を選ぶと、簡単で取り入れやすいで。普段の食事から少し気を使って取り入れてみてください!
5.栄養管理のための選手のサポートフロー
ここまでは、栄養摂取について解説してきましたが、ここではアスリートを見る上で、何を指標にして良いかわからない方のために、サポートの流れについて解説していきます。
サポートフローの順序はこちらです↓↓
①現状把握 ⬅️重要!
②原因を分析
③栄養・休養から出来そうなことを提案
④選手へ出来そうなことを確認
⑤実践
⑥モニタリング
⑦ヒアリング→フィードバック
それでは、1つ1つを紐解いていきましょう!
①の現状把握でのチェックポイントは
□食事内容
□練習量・強度
□1日のスケジュール
□コンディションチェック
この4つのチェックを行いましょう!
コンディションチェックには、下記の表を参考にしてみてください!
■BMI■
こういった数値を用いることで、明確な目標を立てることができ、良くなったのか悪くなったのかがわかりやすくなります。
また便や尿からも健康状態が分かります。
この画像を見せながら選手に説明すると、選手自信でも気付くことがあるのでいいと思います。
また、血液検査からわかることもたくさんあります。
血液検査の結果を見ただけで、筋肉や内臓疲労の状態がどうなってるかがわかります。
血液検査の結果で一般的に知られているのは貧血が多いと思います。特に貧血は女性に多いとされています。その貧血について詳しく解説していきます。
6.女性アスリートをサポートする上で知っておいて欲しい貧血について
貧血の原因としては
・赤血球産生の低下
・赤血球を作る材料の不足(鉄・銅・亜鉛・タンパク質・エネルギーなどの不足 ⇨夏の場合は、発汗により不足のリスクが高くなる)
・赤血球破壊の亢進(溶血)
・物理的な衝撃(走りすぎ、ジャンプのしすぎ)で赤血球が壊れる
・赤血球の喪失
・外傷による出血や、出血傾向などによる持続性出血
などがあります。
女性アスリートは体内の鉄が不足して起こる 鉄欠乏貧血 が多く起こります。日々の食事からの鉄の摂取不足が続くと、体内の貯蔵鉄が使用され、血液中の鉄の状態を保とうと働きます。この貯蔵鉄が枯渇し始めると、鉄欠乏性貧血になります。
鉄は赤血球の成分であるヘモグロビンを作るために必要な栄養素です。ヘモグロビンは血液中の赤血球の中で、酸素を運ぶ役割を担っています。つまり、酸素を運搬する能力は、血液中のヘモグロビン量が影響するということです。
ヘモグロビンは、ハードなトレーニングによって多くの酸素を使用するアスリートにとって、重要な成分です。女性は毎月の月経で血液とともに鉄が流出するため、貧血になりやすい傾向があります。 鉄の吸収率は10%程度のため、日々の食事を工夫することがポイントになります!
鉄欠乏性貧血のメカニズムはこちらです。
貧血になるとパフォーマンスにも影響が生じるため注意が必要になります。
またここで1つ、豆知識をご紹介致します💡
今の自分は「いつの栄養」からできているか考えたことはありますか??
細胞にはそれぞれ生まれ変わる周期があります。血液や、肌の細胞の生まれ変わる周期は聞いた事がある人もいると思います。
それと同様に臓器や骨にもそれぞれ生まれ変わる周期が存在します。
それぞれの周期を知っておくことで、栄養の摂り方などを変えることが出来るので参考にしてみてください!
ー細胞の生まれ変わる周期ー
・口の中:2日 ・肝臓:60日
・胃・腸:5日 ・筋肉:60日
・心臓:22日 ・骨:90日
・肌:28日 ・血液:120日
6年周期で、すべての細胞が入れ替わると言われています。つまり、毎日の積み重ねが、1年後、3年後、5年後の健康に大きく影響します!
貧血の原因やメカニズムがわかったところで、最後に食事での対策についてお伝えします。
■貧血対策 食事ポイントについて■
貧血気味だなと思っている方も、このようにそれぞれのポイントに気をつけて食事することを心掛けてください!
6.まとめ
7月4日に女性限定で行われた「プロが教える回復食〜個々にあった食事法を考えるポイント」にて、私が学んだことをご紹介しました。
教科書通り、全ての人に同じようにとするのではなく、一人一人にあった食事方法を考えていくことが大切なんだなということを学びました。気になっていたプロテインについても学ぶことができ、プロテインにもそれぞれ違った役割があり、正しく摂取することで体の変化や、リカバリーに使えることがわかりました。
選手の栄養などに気を使ってあげるのもトレーナーの役目だと思います。これを機にもっと深く学習していき、選手にあったものを提供できるようになれるようにしていこうと思いました。
トレーナーをしている皆さんも、様々な方面から選手をアプローチできるように一緒に頑張りましょう!!