【開催報告】超実践!野球現場で結果を出せる自重トレ

1.はじめに

みなさん、こんにちは!GAP東京の牧です。

寒い季節、体調はいかがでしょうか?

さて、今回は11月28日に行われた「超実践!野球現場で結果を出せる自重トレ」の内容をまとめていきます!

・これからスポーツ現場で活躍したい
・野球の現場で必要なトレーニング法を知りたい
・トレーニングの基本を復習したい

このような学生トレーナーの皆さんには必見の内容ですので、ぜひ最後までご覧ください!

2.トレーニングを処方する前に

自重トレーニングの特徴

今回は「自重トレーニング」がメインテーマです。

自分のカラダを使った自重トレーニングには、以下のような特徴があります。

・その場で行いやすい

自重トレーニングは腕立て伏せなど、自分のカラダがあればどこでもできるのが一番のメリットです。トレーナーとしても選手としても、気づいたときにすぐに処方、実践できます。

・ケガをしにくい

自分の体重という、普段感じている重さを利用するトレーニングなので、カラダのコントロールをしやすいです。したがってダンベルなどの器具を利用したトレーニングにくらべて、ケガをするリスクが低くなります。

・全身をバランスよく使う

胸を鍛える自重トレーニングに「腕立て伏せ」がありますが、胸だけでなく、姿勢を支えるために全身の筋肉が使われます。ほとんどのスポーツは全身を使うので、スポーツの成績向上にも大きく貢献できるでしょう。これらの自重トレーニングが持つ特徴を把握したうえで、後述する内容を理解すると、トレーナーとしての引き出しが増えると思います。

目的を考える

そもそも、トレーニングとは何のためにするのでしょうか。トレーニングには、大きく分けて2つの目的があります。

まず真っ先に思い付くのは「パフォーマンスアップのため」です。野球で言えば、「球を遠くに飛ばしたい」「球速を上げたい」など、結果を出すためにトレーニングを行います。

もう1つは「障害予防」です。ケガや故障を予防し、自分が持っている能力を100%出すために行うトレーニングがあります。

「持っている能力の最大値を上げるため」、「持っている能力を最大限発揮するため」、もしくはその両方を狙って、トレーニングは行われます。つまり、私たちトレーナーは「何のためにトレーニングを処方するのか」を常に考えて、選手のサポートをしていく必要があります。

目標を考える

さて「何のために」という、トレーニングの目的が決まったら、次は「どこを目指すのか」という目標を決めます。

例えば、たとえばあなたが旅行したいとします。そのときにまず、考えるのは「どこに行きたいか」ですよね。そこから交通手段や細かな日程を、決めていくかと思います。

トレーニングも旅行と一緒で、「何を目指すのか」を明確にしていく必要があります。

「球速を上げたい」のか、「コントロールを良くしたい」のか。仮に「球速を上げたい」なら、何km/h上げたいのか。その選手が球速を上げるには、カラダの面で何が必要なのか。目標は具体的であればあるほど、達成しやすくなります。

さらに目標を考えることに加えて大切なのは、「今、選手がどの位置にいるか」を把握することです。現在地を把握し、目標を考えることで、初めて効率的なトレーニング処方が可能になります。

先ほどの旅行で例えると、目標は「JR渋谷駅」だとします。
現在地が「スクランブル交差点」であれば、渋谷駅までは「徒歩」が一番早い。現在地が「JR八王子駅」であれば、「電車」が良いかと思います。現在地が「イギリス」であれば、「飛行機」がベストでしょう。

このように「渋谷駅」という同じ目標でも、「現在地」によって「手段」が大きく変わります。

「150㎞/hの球を投げたい」という目標でも、もともと140㎞/h後半を投げられる選手なのか、140km/hも出せていない選手なのかという「現在地」によって、処方するトレーニングも変わってくるという事です。

選手が、早く確実に結果を出すために、私たちトレーナーは、「目標」「目的」を考えたトレーニングを処方していく必要があるのです。そしてトレーニングの結果や感覚を選手と共有し、その都度、調整していくことが重要です。

筋肉ではなく、動作を鍛える

次に、トレーニングがどのようにして、カラダの機能を上げるのかを見てきます。トレーニングをすると、なぜカラダの能力が上がるのでしょうか?

「運動をしろ」とカラダに命令を送る脳は、運動パターンを認識して、その動きを強化しています。

つまり、個々の筋肉ではなく、運動パターンによってその運動を改善、向上することができます。

例えば、上腕二頭筋を動かすアームカールのような動きでは、脳は「肘を曲げている」という動きを認識しています。決して「上腕二頭筋が活動している」という認識はしていないのです。この流れによって、トレーニングはカラダの機能を向上させます。

つまりスポーツ選手にはボディビルのような見た目を鍛えるのではなく、そのスポーツに使う「動きを意識した」トレーニングを考える必要があります。これは、後述する「トレーニングの原理原則」にも通じる考え方です。

そして、動作を意識したトレーニングを処方するには、「運動方向」を考える必要があります。運動方向というのは「その動き自体の方向」と、「動きに対して自分のカラダがどう動くのか」という2点があります。「その動き自体の方向」というのは、「前後」「左右」「上下」の動きがあります。例えば、走塁は前に向かって走るといった「前後」の動きがありますね。

そして「動きに対して自分のカラダの動き」というのは、例えば走塁するときは、前に向かって走るために、腕や脚が、「屈曲」や「伸展」を繰り返します。もちろん、ここで例に挙げた「走塁」の動作は前後の動き以外にも、前額面や水平面の動きも関わってきます。トレーナーは、この「その動作自体の動き」と「その動作に対してカラダがどう動くか」を考え、メニューを処方するべきです。

トレーニングの原理原則

考え方の次は、トレーニングの原理原則です。そもそも「原理」や「原則」とはなんでしょうか。簡単に説明します。

「原理」とは、その物事が成り立つための宇宙・自然界の性質(理)のことであり、「原則」とは、その性質に対してどのようにするかを人間が決めた規則のことです。
これらの意味を理解した上で、トレーニングの3つの原理と5つの原則を見ていきましょう。

それぞれ箇条書きにまとめます。

3原理

「過負荷」

日常生活以上の負荷をカラダに与えなければ、トレーニングの効果は現れません。これを「過負荷の原理(オーバーロード)」といいます。また、トレーニングをしていてもいつも同じ負荷では、カラダが刺激になれてしまうため効果が現れにくくなります。

カラダに変化を出すためには、つねに負荷を高めていくことが必要です。

「可逆性」

トレーニングを行って高めた体力や筋量も、トレーニングを止めてしまえば元のレベルに戻ってしまうでしょう。これを「可逆性の原理」といいます。体力や体型を維持するためには、トレーニングを継続していく必要があるのです。

「特異性」

トレーニングはやり方によって効果が変わります。これを「特異性の原理」といいます。筋力を高めたいのに筋持久力を高めるやり方をしていては、求める成果は現れません。どんな目的であれ、目的に合った正しいやり方を行う必要があります。

5原則

「全面性」

動作中は、実際に動いている部分以外でも姿勢を保ち、カラダを安定させるため、無意識的に力を発揮している部分が存在します。そのため、気になる部分だけでなく全体的にトレーニングを行うことで、気になる部分のトレーニング効果も高まるのです。このことを「全面性の原則」といいます。これは筋力だけに限ったことではありません。いろいろなトレーニングを行い、持久力や柔軟性などほかの能力も伸ばすようにすることが重要です。

「漸進性」

筋肉を増やしていくためには、同じ負荷でずっと続けるのではなく、徐々に負荷を高めていくことが必要です。これを「漸進性(ぜんしんせい)の原則」といいます。この原則のポイントは、“徐々に”という点です。

「反復性」

トレーニング効果を出すためには、どんなに優れたトレーニングでも数回やっただけで効果は現れません。反復して継続することで、はじめて効果が現れるのです。これを「反復性の原則」といいます。負荷を高めながらトレーニングを継続していくことで、効果が高まっていくのです。

「個別性」

カラダは個人によって別物であり、性別・年齢・身体組成・体力など、すべてが同じという人は誰1人いません。そのため、トレーニングの内容も皆同じではないのです。目的もあわせて個人に合ったトレーニングや負荷設定を行わなくては、効率よく効果は現れません。これを「個別性の原則」といいます。

「意識性」

そのトレーニングがどんな意味を持っているか。このことを理解すると、トレーニング効果が高まります。それを行うことでどんな能力が向上するのか、どこが鍛えられるのかしっかり理解したうえで取り組んだ方が、効果は現れやすいのです。

あなたが選手にトレーニングを処方する際、これらの原理原則に基づいているかを毎回確認していきましょう。

自重トレーニングの負荷

さて、ここまではトレーニングを処方する以前に、トレーナーとして必要なマインドや原理原則を紹介しました。
ここからは実際に処方するときに重要になる、「負荷のかけ方」についてまとめていきます。

それでは自重トレーニングの負荷を調整する要素を挙げていきます。

・重量

ダンベルなど、重さを調節することで負荷を調整することができます。自重トレーニングの場合は自分の体重が重量になるので、重量としての負荷の調整は不可能といって良いでしょう。

・時間

時間を調整することで負荷を調整することができます。トレーニング自体の時間はもちろん、セット間の休憩時間でも調整が可能です。

・ボリューム

回数やセット数、種目の量などのボリュームで調整します。

・ポジション

自分のカラダの位置によって負荷を変えることができます。
スクワットであれば、両足の幅を変えたり、片足でやる等によって負荷の程度はもちろん、動作が変わるので違う部位を鍛えることも可能です。

・動作の大きさ、スピード

大きく動かすのか、小さく行うのか。ゆっくりやるのか、速く行うのか。これらによっても負荷のかけ方を調整できます。

・方向

これは負荷の量というより、「負荷をかける位置」を変えることができます。
例えば腹筋運動では、まっすぐ状態を起こす場合とカラダを捻って起きる動作では負荷のかかる位置が変わってきます。

このように器具を利用したトレーニングにくらべて、負荷のかけ方が難しく思える自重トレーニングでも、工夫次第で、様々なやり方があるのが分かると思います。

・関節の役割

さて、トレーニング処方の考え方の基礎を理解したところで、トレーニングを処方する際に、重要になる解剖学的な考え方も理解しておきましょう。トレーニングを始め、私たちがカラダを動かすには関節の動きが重要になります。

「腕を曲げる」という行為も、筋肉と共に肘を構成する関節が動きます。そんな動きの始まりである各関節には、「動いて欲しい」関節と「安定して欲しい関節」が存在します。俗にいう「背骨」を例に挙げても、「頸椎」は安定性が重要である一方、「胸椎」は可動性が重要です。このような考え方を「ジョイント・バイ・ジョイント理論」(ジョイント=関節)といいます。

もちろん、この考え方は絶対的なものではなく、動きによってはセオリー通りにならない場合もあります。まずは、基本の考えを習得し、現場に合わせた評価をしていく必要があります。

3.各能力を高めるトレーニング例

ここからは実際にスポーツ現場、特に野球で使われるトレーニングの一例を高めたい能力ごとに紹介していきます。

モビリティを高めるトレーニング


スタビリティを高めるトレーニング


ストレングスを高めるトレーニング


まとめ

今回はトレーナーがスポーツ現場で活躍するために知っておきたい、トレーニング処方の基礎的な考え方と、実際のトレーニング例をご紹介してきました。

・自重トレーニングの特徴
・トレーニングの目的と、目標を考える
・トレーニングは見た目でなく、動作を鍛える
・トレーニングの原理と原則
・自重トレーニングの負荷のかけ方
・各関節のメインの役割
・実際のトレーニング例

ぜひ、何度も見直してトレーニング処方の基礎を習得し、スポーツ現場で生かしてください!

この記事では考え方をメインにお伝えしましたが、「自分でトレーニングの、見本ができる」という能力も大切だと感じました。

当日の勉強会では講師の畝本さんがトレーニング例をお手本として見せてくれたのですが、とても綺麗なフォームでした。一見簡単そうなメニューでも、やってみると畝本さんのように綺麗にできない。きっとご自身でも多くのメニューを実践しているのではないかと思います。

選手に説得力をもってトレーニングを処方するために、日頃のインプットはもちろん、私達トレーナーも、自分のカラダでアウトプットしていくことが大切だと感じました。