なぜピリオダイゼーションが大切なのか?野球現場での戦略と取組
こんにちは!GAP東京の佐藤です。
10月に『パフォーマンスを発揮し続けるためのコンディショニングの実際』の開催報告ブログです!
当日参加できなかった方は、ブログの最後に勉強会の動画もあるのでぜひご覧ください。
コンディショニングの調整が難しい年に
COVID19が全世界で大流行し、スポーツ業界では東京オリンピックの延期が決まり、Jリーグやプロ野球でも開幕が大幅に遅れました。
アマチュアスポーツでもインターハイや夏の甲子園大会が中止となり、どのスポーツも変則的な日程の中で試合や大会が行われています。
特に今年は、選手のコンディショニング面での調整が難しくなっていますが、そういった中でも選手は結果が求められるのがスポーツの難しさでもあり、面白さではないでしょうか。
怪我や病気、環境因子に左右されずに選手が最高のパフォーマンスを発揮し続けるには、試合や大会に向けたコンディショニングの準備と戦略が不可欠となります。
今回は、福岡ソフトバンクホークスと東京ヤクルトスワローズで8年間、コンディショニングコーチやアスレティックトレーナーとしてご活躍され、現在はラグビーU-20日本代表選手をはじめ、様々なアスリートのコンディショニングをされている橘内さんを講師としてお招きしました。
実践的ピリオダイゼーションの戦略と取り組みについて、プロ野球での実例を交えてお話ししていただきました。
講師
橘内基純
・VERSATR 代表
・JAPO-AT
・NSCA-CSCS
Ph.D.(スポーツ科学)。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。
元・福岡ソフトバンクホークスコンディショニングコーチ、東京ヤクルトスワローズ アスレティックトレーナー。
コンディショニングとピリオダイゼーション
講義の内容に入る前に、皆さんは『コンディショニング』と『ピリオダイゼーション』とは何かをご存知でしょうか??
コンディショニングとは、パフォーマンス発揮に必要なすべての要因を、ある目的に向かって望ましい状態へと整えていくことであり、メンタル面やフィジカル面の内容は『内的要因』といわれ、温度や湿度、道具やグラウンド状況などを『外的要因』といいます。
ピリオダイゼーションとは、適切な時点でピークパフォーマンスが出せる状態にするために、トレーニングの介入を順序立てて、統合する論理的で体系的な過程のことを指します。
例を挙げると、プロ野球の世界ではピッチャーは大きく先発投手と中継ぎ投手とに分けられることができます。
先発投手は一回の試合で多くて100球前後を投げ、次回登板は約6日間ほど間が空きます。
反対に、中継ぎ投手は一回の試合で20~30球前後を投げ、1週間で約3〜4日の登板があります。
このことから、先発投手も中継ぎ投手も同じコンディショニング内容で、同じタイミングでピークを迎えるよう調整していては、選手の故障を防ぎながらパフォーマンスの維持・向上を目指すことはできません。
大切なのは選手やチームの現状と目標を理解し、スケジュールから逆算しながらどこにピークを持ってくるのか、具体的なコンディショニング計画を『見える化』していくことが重要です。
計画立案後に行う具体的な行動内容
橘内さんは上記のように1年間のスケジュールを、週に変換しトレーニングプランを組み立てていたようです。
1年間でどこに一番ピークを持っていきたいのか。また、練習量の調整はどのようなバランスになっているかがよく分かるように、グラフも織り交ぜながら『見える化』しています。
このような計画を立案し、どのように1日に落とし込んでいくのか。プロ野球は試合がある日は特に、野球の技術練習が1日の大半を占めています
そういった環境の中で、橘内さんは年間計画からさらに細かく、ウィークリープログラムやデイリープログラムを組み立て、チーム環境や選手の調子に応じて、1日や1週間の中でメニュー内容を調整されていたそうです。
この時に大事になってくることは、『目的にあったトレーニング』と『継続性を持たせること』の2つであるとおっしゃっていました。
講義内では、実際に指導されていたメニューも紹介していただき、そのメニューをどんな目的でシーズンのいつ頃やられていたのかなどもお話していただきました。
フィードバックからプランの見直し&目標の再設定を
選手やチームのコンディショニングプランを構築する上で、『現状を知る』ことがとても大切になってきます。
現在では、必要な情報を瞬時に得ることができるようになったため、中でも何の情報を何のために得るのかが重要になってきます。
橘内さんは、チームや選手の現状を知る上で以下の項目が特に知っておくべき情報だとお話しされていました。
▼身体組成
身長、体重、体脂肪量、骨格筋量など
▼パフォーマンス
フィールドテストの結果など
▼環境
天候やサーフェス、道具など
▼心理
試合状況や成績、プライベートなど
これらの情報を理解した上で、何が要因でコンディショニングが失敗したのか、または成功したのかを分析し、データを取りっぱなしにするのではなく、選手にフィードバックしながらコミュニケーションをとることが重要だと話されていました。
コンディショニングを進めていく上でこれらのPDCAサイクルを回すことはとても大切になってきます。
柔軟に変化しながら成長=実のあるピリオダイゼーションとなります。
まとめ
今回、橘内さんが実際にプロ野球の現場で取り組んでいたコンディショニングの内容や、それをどの順序でチームに落とし込んできたのかをご紹介していただきました。
スキル練習が1日の練習の大半を占める中で、怪我を予防しながらパフォーマンスを上げていくためのプラン作りの奥深さを感じました。
行き当たりばったりの指導ではなく、選手が一番良い状態でシーズンを戦い抜ける準備のために、目的を持って指導ができるトレーナーを目指していきたいです。